認知療法Q&A 本文へジャンプ


認知療法とはどうゆう精神療法(心理療法)ですか

「考え」の持ち方で気持ち「感情」が変わりますか?

認知療法とポジティブシンキングとの違いは何ですか?

「感情」と「認知(考え)」とが関連するのはなぜですか?

認知療法では事実を無視して「考えを変えるだけ」といえませんか?

人は否定的思考の罠にはまりがちなのですか?

認知療法で希望大学に不合格だったときの対処法は考えられますか?

認知療法で言われている「認知のゆがみ」とはなんですか?

「自動思考」を探り出す「思考記録表」とはどうゆうものですか?

「思考記録表」を一人でつけるのは大変ですか?

認知療法と精神分析療法とはどこが違うのですか?

認知療法は具体的にどうやるのですか?

認知療法はどんな人に向いていますか?

認知療法と認知行動療法はどこが違うのですか?





認知療法とはどうゆう精神療法(心理療法)ですか?

認知療法とは、落ち込んでゆううつになったり、ひどい不安に襲われるなど、つらく苦しい「感情」がわき起こってきたときに、知らず知らずのうちに頭の中をかけめぐっている「考え」に注目することによって、そのような自分を苦しめているゆううつ、不安などの「感情」を和らげようとする心理療法です。認知療法ではこの「考え」の部分を「認知」と呼んでいます。
認知療法は認知行動療法と並んでその有効性が実証されている数少ない心理療法のうちの一つで、最近特に注目されています。
認知療法Q&Aのトップへ


「考え」の持ち方で気持ち「感情」が変わりますか?                        
一例を出します。就寝中に隣の部屋からカタンと音がしました。あなたなら何を考え、どのような気持ち「感情」になりますか。ある時は「泥棒が入ってきた音かもしれない」と考えて、恐怖の気持ち「感情」がわいてくるかもしれません。その後に窓を閉め忘れたことに気づき、「カーテンが風に揺れた音だ」と考えて安心の気持ち「感情」を持つかもしれません。このように同じ事態でも「考え」によって、気持ち「感情」が変わってくるのです。認知療法は、そのような「考え」に注目して気持ち「感情」のコントロールをします。
認知療法Q&Aのトップへ


認知療法とポジティブシンキングとの違いは何ですか?

認知療法では、否定的な「認知(考え)」を肯定的な考え(ポジティブシンキング)に変えるわけではありません。なぜなら否定的な考えが正しいこともあるからです。たとえば、隣の部屋の音の原因は、「カーテンが風に揺れた音」ではなく、「泥棒が入ってきた音」という好ましくないことかもしれません。そのようなことに対しては現実的な対処が求められるでしょう。認知療法では、否定的なものだけではなく、中立的なもの、肯定的なものを取り入れた合理的で現実的な「認知(考え)」を導き出し、対処しようとするものです。
認知療法Q&Aのトップへ


「感情」と「認知(考え)」とが関連するのはなぜですか?
不快な「感情」を和らげようとするときに「認知(考え)」に注目するのはなぜでしょうか?
ゆううつ、不安、緊張、悲しみ、喜びといった人の「感情」と、考え方や価値観、あるいは物の見方といった「認知(考え)」には密接な関連があるといわれています。例えばちょっとしたことで気分がゆううつになった時には、「自分はもうだめだ」「何をやっても無駄だ」のようにネガティブ思考に陥ってしまいがちですが、ふとしたきっかけで気分が改善すると、「あの時どうしてあんなにネガティブ思考に陥っていたのかが不思議なくらいだ」というように考えることがあります。あまりにうれしい出来事があった時には、逆に「自分の人生はばら色だ」「自分は生涯安泰だ」のように考えるかもしれません。誰でも、このように極端に否定的な考え方、正常な考え方、極端に肯定的な考え方の全てを経験したことがあると思います。極端に落ち込んでいるときには極端に否定的な考え方が生じているでしょうし、逆に極端にうれしい時には非現実的で誇大的な考えが頭に浮かんでいるものと思われます。
このように、「感情」と「認知(考え)」とはお互いに影響を及ぼしあっているのです。
認知療法Q&Aのトップへ


認知療法では事実を無視して「考えを変えるだけ」といえませんか?
認知療法では、不快な感情を軽減するために、否定的な考えを見直していくことになりますが、この否定的な考えそのものを取り除くことが認知療法の目的ではありません。場合によっては否定的な考えが正しいということもあるからです。よくないのは、否定的な考えしか持てないことなのです。
認知療法に対して、ただ「考えを変えるだけ」ではないか、「否定的な事実を直視し、その事実を変えようとする努力を怠り、あきらめているだけ」ではないかと、誤ったイメージを持たれる方がいます。そうではなく、認知療法では、否定的なものだけでなく、肯定的なものも、中立的なものなど、さまざまな考え方を取り入れることによって、今ある事態に対して合理的な判断をし、現実的な対応ができるよう促していくというものです。
認知療法Q&Aのトップへ


人は否定的思考の罠にはまりがちなのですか?
何かよくない出来事が起こったときに、その事実を本当に「正常で客観的に」考えることができればいいのですが、実際にはそううまくはいかないものです。
「こんなことさえ起こらなければよかった」、「自分はこうだからいつもダメなんだ」、「事態は今後けっしてよい方向にはいかないだろう」などと、いつまでもくよくよ考えて落ちこんでしまいます。そして、それ以上何か対策を立てようとする気力がわきおこってこないことが多いのです。そのために、人は否定的な思考の悪循環の罠にはまってしまいがちといえます。
認知療法Q&Aのトップへ


認知療法で希望大学に不合格だったときの対処法は考えられますか?
では、大学受験で希望の大学に不合格となり、ひどく落ちこんだ場合のことを考えてみます。「考えを変えるだけ」の誤ったイメージの対処法では、「希望の大学に不合格であったからといって人生は絶望ではない」と自分に言い聞かせてあきらめる、といったものになるでしょうか。
しかし認知療法では、このように「考えを変えるだけ」ではありません。認知療法では、大学受験の不合格によって絶望的である側面と、そうでない側面の双方を等しく考慮して、「その上でどのような対処法をとればいいか」ということを考えていくのです。
認知療法によってさまざまな見方、考えを総合した結果、浪人してもう一度同じ大学を受験し直すことが、よりよい対処法であるという結論に達するかもしれません。これは、ただ落ちこんでいるばかりの時にはとても思いつかなかった対処法である可能性があります。
つまり認知療法は、事実を無視してあきらめるために「考えを変えるだけ」ではなく、人生を投げてしまわないために、事実を直視して、それに対する対処法を探るものなのです。
認知療法Q&Aのトップへ


認知療法で言われている「認知のゆがみ」とはなんですか?

正常な判断や合理的な対処行動を妨げるような極端で偏った考えを認知療法では「認知のゆがみ」と呼んでいます。「認知のゆがみ」のパターンには、以下のようなものがあると言われています。
(1)全か無か思考
これは良いか悪いか、白か黒かのどちらかしかない考え方のことをいいます。少しでも失敗すると全てダメであるように思えてしまう場合です。しかし現実には物事はその中間であることがほとんどです。
(2)破局的な見方
いつも最悪の事態を考えてしまい、ちょっとした困難から大きな破局や不幸な結末を想像してしまうことです。
(3)過度の一般化
些細な出来事を過度に一般化して考え、たった一回の出来事から全てを決めつけてしまうことです。
(4)選択的な抽象化
良い情報を無視して、悪い情報ばかりを取り上げてしまうことです。
(5)肯定面の否認
ものごとの否定的側面のみを取り上げて意味づけ、肯定的側面は無視してしまうことです。
(6)恣意的な推論
根拠がないのに思いつきで判断することです。
(7)誇張と矮小化
事実や出来事を実際よりも高く評価したり逆に軽視したりすることです。自分の欠点や短所が誇張され、長所が矮小化されると、劣等感は強くなります。
(8)感情的理由づけ
自分の気持ちや感情を理由にして、そこから出来事や事実を意味づけることです。例えば、 「こんなに不安になるのだから、この問題は解決できないに違いない」などがその例です。
(9)「すべき」表現
「〜」すべきである、「〜しなければならない」といった考えのことをいいます。
(10)レッテル貼りと誤ったレッテル貼
 自分に否定的な言葉のレッテルを貼ることを言います。例えば、「自分は落ちこぼれだ」はその例です。
(11)自己関連づけ
自分とは本来関係のない出来事や事実を、自分に責任があるかのように判断してしまうことです。
(12)否定的予測
否定的な予測や思い込みをすることによって、行動が抑制されてしまうため、結果的にその予測が実現したかのように、当初の否定的な予測が確信になってしまうことです。
認知療法Q&Aのトップへ


「自動思考」を探り出す「思考記録表」とはどんなものですか?
現実的に物事を捉えて対処するということは、言うのは簡単ですが実際に実行するとなるとむずかしいものです。それができれば誰も苦労しない、ということになるでしょう。
ここでこれを解決するためのいくつかある認知療法の技法のうち、「自動思考」を探り出す二つの作業を行う「思考記録表」を取り上げたいと思います。

まず一つ目は、不快な感情と共に生じている「認知(考え)」をきちんとつかまえる作業です。このような考えを「自動思考」といいますが、これは半ば無意識的に自動的、瞬間的に頭の中をとても速いスピードでかけめぐるものなので、意図的に捉えるにはある種の技術が必要となります。
しかもその中には言葉ではなく、イメージや記憶として出現するものもあります。
したがって「認知(考え)」とは言いながらあまり自分では「考えている」という意識のないものが多く、「自動思考」は、そう思っていることすら自分ではほとんど気づいていないという程度のものであることが多いのです。そこで、それを意図的に捕まえる作業が必要となります。

二つ目は「その考えが本当に正しいかどうか、できるだけたくさんの客観的な証拠を挙げることによって調べる」という地道な作業があります。
これは裁判において被疑者に検事と弁護人がつき、いろいろな角度からひたすら客観的な証拠を挙げることによって、その疑惑の真偽を確かめていくことと似ています。
なんだ、そんなことか、とばかばかしく思えるかもしれません。
しかし、これこそが不快な感情から脱却し現実的に対処する上での重要な鍵となるのです。具体的には、認知療法では最も不快な感情と結びついている「自動思考」をできるだけ正確に記述し、その「自動思考」の根拠と反証を挙げるという作業を行うことになります。
これらの二つの作業を行うために、認知療法では「思考記録表」と呼ばれるものを用います。
認知療法Q&Aのトップへ


「思考記録表」を一人でつけるのは大変ですか?

「思考記録表」をつける作業は一人で行えるようになることが理想ですが、不快な感情にすっぽり覆われてしまっているときには一人で行うのは困難になります。
特に「自動思考の反証」を一人で見つけることが難しいものです。
そこで認知療法のカウンセラーの力を借りることによって、このような作業を円滑に効果的に進めることが可能となります。
認知療法Q&Aのトップへ


認知療法と精神分析療法とはどこが違うのですか?
第一の大きな違いは面接の仕方にあります。精神分析療法は主としてクライエントが自由に語っていく形になりますが、認知療法ではカウンセラーが質問し、それに対してクライエントが自由に答えていくという形式になります。また、認知療法では宿題を出したり、問題の対処法についてカウンセラーとクライエントが共に考えていきますが、精神分析療法ではこのようなことは行いません。
第二の違いは、精神分析療法では自分の思うところ感じるところを自由に語っていく上で、意識の奥深くに沈んだ無意識の部分をカウンセラーに指摘してもらうという作業を行いますが、認知療法では、半ば意図的に自分の考えをつかまえていくという作業を行うことになります。したがって、自分でもある程度気づいている部分を自ら掘り下げていくことになります。つまり、自分で手を伸ばして触れることのできる程度の意識の内容を取り扱っていくことになります。
認知療法Q&Aのトップへ


認知療法は具体的にどうやるのですか?
具体的な認知療法による治療の流れは以下のようになります。
ステップ1:困っていることを明らかにし、そこから具体的な目標を決める。
ステップ2:「自動思考」をつかまえてこれを修正する。「思考記録表」の作成。
<ポイント1>苦しい気分に陥っている時に頭の中をかけめぐっている「考え」をつかまえる。同じようにその時の感覚を言葉による一文で正確に表現する。
<ポイント2>自動思考に対する客観的な証拠と反証をできるだけたくさん挙げる
<ポイント3>苦しい気分が改善したか、それによって行動が変化したかを          随時チェックする。
ステップ3:ステップ2で修正した考えを日常場面で実際に行動して試してみる。
ステップ4:いつも陥ってしまいがちな考え方、価値観に気づいて、これを修正する。
ステップ5:これまでの復習と今後のための予防対策。
認知療法Q&Aのトップへ


認知療法はどんなとき、どんな人に向いていますか?
認知療法はうつ状態と不安状態に有効であると言われています。したがって、うつ状態の代表である「うつ病」や、不安障害の代表である「パニック障害」に対して特に効力を発揮すると言われています。このことは欧米での無作為統制試験によっても実証されています。しかしうつ病やパニック障害の診断がつかない、他の精神疾患の場合でも、うつ状態や不安状態を伴っている場合には、これに対して認知療法を適用すると効果的であることが多いようです。健常者における一過性のうつ状態、不安状態についても同様のことが言えます。
以上をまとめると、健常者であれ、どのような疾患であれ、認知療法はうつ状態と不安状態に向いていると言うことができます。
認知療法Q&Aのトップへ


認知療法と認知行動療法はどこが違うのですか?
結論から言うと、さほど違いはありません。しかし認知療法はより「認知(考え)」の修正に治療の比重を置き、認知行動療法は目に見える客観的な行動の変容に比重を置くと言うことができるでしょう。ここから対象の比重にも違いが見られ、認知療法はうつ病や人格障害、認知行動療法はさまざまな不安障害に適用されることが多いようです。
認知療法Q&Aのトップへ